病気のかんたん知恵袋

生物は生きるために外界から栄養を取り込み、それをエネルギーに変えて生きています。栄養を熱に変え、活動の燃料にし、また自分の体を作っていく活動を代謝=メタボリズムと言います。何万年、何億年の間にこの仕組みは進化し、取り込んだ栄養を消化吸収する胃腸、吸収した栄養を自分にあった成分に変える肝臓、栄養を体のあちこちに運ぶ血管、そして余分な栄養を蓄積する脂肪組織が発達しました。

 初期の生物は、栄養を取り込む機会が少ないため、栄養を「食べては使う」を繰り返すその日暮らしでした。それはヒトも同じで数千年いや数百年前までその日暮らしに近い食生活だったので、栄養の取れる時にはたくさん食べ、使わない分は脂肪として身体に蓄え、数日食べずとも生き伸びてきました。これには倹約遺伝子が重要な働きをしておりこの遺伝子を持つ個体が生き延びて来たのです。

 農業を開始し、物々交換を行い、明日の食料に事欠かなくなったのは長いヒトの歴史からみれば極く最近です。この程度の期間では倹約遺伝子は変化しません。現代人は必要なエネルギーをはるかに越えた食事を摂り、おいしさを追及するようになりました。当然、倹約遺伝子はエネルギーを脂肪に変えどんどん蓄積し、ヒトは栄養過剰から来る病気を起こすようになってしまいました。これが21世紀の私たちが向かい合っている現状です。

 メタボリック症候群と総称されますが、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、高尿酸血症、脂肪肝とおなじみの病気です。「過食や運動不足」と原因はわかっているのになかなか止められない。人間の欲望(食欲)をどうコントロールするか難しい問題です。